社会福祉の現場で25年間、多くの高齢者とそのご家族の「リアルな暮らしと人生の節目」に寄り添ってきた清水智子行政書士事務所が、認知症対策の核心である「任意後見(にんいこうけん)」と「法定後見(ほうていこうけん)」の違いについて、わかりやすく徹底解説します。
「親の物忘れが進んできたけれど、後見人制度って調べると2種類あってよくわからない」
「うちの家族の場合は、どちらを選べばいいの?」
福祉の現場で約50件の成年後見人を務め、ご家族のリアルな危機を一緒に乗り越えてきたからこそ言える、「メリット・デメリットを踏まえた、後悔しない後見制度の選び方」をお伝えします。
任意後見と法定後見の「決定的な違い」とは?
後見制度(成年後見制度)は、認知症などによって判断能力が不十分になった方に代わって、お金の管理や福祉サービス等の契約手続きを法的にサポートする仕組みです。
この2つの決定的な違いは、一言でいうと「本人が『元気なうち』に自分で選ぶか、判断能力が『低下した後』に裁判所に選んでもらうか」という点にあります。
まずは2つの特徴をわかりやすく比較表にまとめました。
| 比較項目 | 任意後見(にんいこうけん) | 法定後見(ほうていこうけん) |
| 手続きを行うタイミング | 親が「元気で頭がしっかりしているうち」 | 親の判断能力が「実際に低下した後」 |
| 後見人を誰にするか | 親自身が自由に指名できる (子どもや信頼できる専門家など) | 家庭裁判所が決定する (見知らぬ専門家が選ばれるケースが多い) |
| 任せる仕事の内容 | 親の希望に合わせて自由に設計 (実家の処分方法や介護の希望など) | 法律で定められた一律の権限 (財産の維持・保護が最優先) |
| 毎月の維持費(報酬) | 認知症発症前は0円。 発症後は監督人への報酬(月1〜2万円程度) | 後見人への報酬として、亡くなるまで毎月2万〜6万円程度がずっと発生 |
| 後見人の「取消権」 | なし(本人の自由な意思を尊重) | あり(本人が悪質な詐欺に遭った契約などを後から取り消せる) |
1. 任意後見のメリット・デメリット(元気なうちの備え)
⭕ メリット:自分の人生を自分でデザインできる
最大の特徴は自由度です。「将来認知症になったら、長女の〇〇に財産を管理してもらい、〇〇の老人ホームに入所させてほしい。自宅は売却してその費用に充てて構わない」というように、自分の希望(QOL:生活の質)に沿った内容を公正証書で100%形にできます。
❌ デメリット:詐欺から守る「取消権」がない
任意後見人には、本人が勝手にしてしまった契約を取り消す権利(取消権)がありません。そのため、認知症になった本人が悪質な訪問販売などで高額な契約を結んでしまった場合、後からその契約を無効にすることが法定後見に比べて難しくなります。
2. 法定後見のメリット・デメリット(困ったときの最終手段)
⭕ メリット:本人の失敗を後から守れる「強い権限」
法定後見人には強力な「取消権」が与えられます。認知症の方が騙されて購入してしまった高額な商品や、不当な契約を後から法的に取り消して財産を守ることができます。すでに口座が凍結されてしまい、本人の判断能力がない場合の「最終手段」として極めて有効です。
❌ デメリット:家族が選ばれず、毎月の費用負担が重い
法定後見は、家庭裁判所が一切の主導権を握ります。「長男を後見人にしたい」と申し立てても、親族間に少しでも意見のズレがあったり財産額が多かったりすると、裁判所は家族ではなく、見知らぬ弁護士や司法書士を後見人に選びます。
そうなると、裁判所の非常に厳しい監督のもとでお金がガチガチに管理され、孫への祝い金や家族のための支出は一切できなくなるだけでなく、後見人への報酬(月2万〜6万円)が親が亡くなるまでの何年間も親の財産から引かれ続けることになります。
結局、どちらを選ぶべき?判断のロードマップ
ご家族の現在の状態によって、選ぶべき道は明確に決まります。
1.親がまだ元気で会話がしっかりできる場合:パターンA。
迷わず「任意後見」を選んでください。今すぐ公証役場で契約を結んでおけば、将来の口座凍結や実家処分で家族が困るリスクをゼロにできます。元気なうちは効力がスタートしないため、無駄な費用もかかりません。
2.物忘れはあるが、自分の意思は伝えられる場合:パターンB。
まだ「任意後見」が間に合う可能性があります。医師の診断書などで「契約の内容が理解できる(意思能力がある)」と確認できれば、自分の意思で後見人を指名できます。手遅れになる前のラストチャンスの段階です。
3.すでに認知症が進行し、意思疎通が難しい場合:パターンC。
任意後見の契約は結べないため、自動的に「法定後見」の申し立てを一択で進めることになります。家庭裁判所への複雑な書類提出が必要となるため、速やかに準備を始める必要があります。
福祉の現場を知り尽くす、当事務所ならではの寄り添いサポート
後見人制度を選ぶことは、単なる法律の書類作成ではありません。その本質は、「認知症になった後も、その人がその人らしく、最期まで安心して豊かな暮らし(QOL)を送るための生活設計」そのものです。
一般の弁護士や行政書士は、法律の手続きはできても「介護保険の現場でどのようなサービスが実際に動いているか」「認知症の症状が今後どう進行していくか」という現場のリアルを知りません。
私は行政書士として確実な法務実務を行うと同時に、25年間、福祉・医療の最前線で社会福祉士やケアマネジャーとして多くの認知症当事者・ご家族と伴走し、自身でも約50件の後見人を務めてきた人間です。家庭裁判所の家事調停委員としての経験も活かし、家族間での揉め事を未然に防ぎながら、医療・介護の運営実態に100%即した「本当に家族が困らない現実的なプラン」をご提案します。
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