24.法定後見制度のメリットと、申し立て前に知っておくべき費用・リスク

社会福祉の現場で25年間、多くの高齢者とそのご家族の「リアルな暮らしと人生の節目」に寄り添ってきた清水智子行政書士事務所が、すでに親御様の認知症が進行してお金の管理などが難しくなった場合の最終手段である「法定後見(ほうていこうけん)制度」について、そのメリットと、申し立てを行う前に絶対に知っておくべき費用やリスクの現実をわかりやすく解説します。

「親の認知症が進んで銀行口座が凍結されてしまった」

「老人ホームへの入所手続きや、実家の処分を代わりに進めたいけれど、何から手をつければいいの?」

大切な家族の認知症と向き合うだけでも心身ともに大きな負担がかかる中で、さらに「裁判所の手続き」という高い壁が立ちはだかると、どうしていいかわからず途方に暮れてしまうものです。

福祉の現場で約50件の成年後見人を務め、まさに認知症の方の生活と財産を守りながら数々の法定後見実務を担ってきたからこそ言える、「表面的な法律知識だけでは分からない、家族のためのリアルな法定後見の心構え」をお伝えします。

そもそも「法定後見制度」とは?

法定後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって、すでに「物事の良し悪しや契約の内容を正しく判断する能力(意思能力)」が不十分になった方に代わって、家庭裁判所が選んだパートナー(後見人)が、お金の管理や福祉サービスの契約などを法的にサポートする仕組みです。

本人の判断能力の度合いに応じて、重い順に「後見(こうけん)」「保佐(ほさ)」「補助(ほじょ)」の3つのステージに分かれており、それぞれ後見人が行えるサポートの範囲が法律で定められています。

法定後見制度を利用する「3つの大きなメリット」

すでに本人の頭がしっかりしていない状態において、この制度は家族を救う非常に強力な味方になります。

メリット1:凍結された銀行口座の解約や不動産の売却ができるようになる

親御様が認知症になると、たとえ実の子どもであっても「親の代理」として定期預金を解約したり、実家を売却したりすることは原則できなくなります(財産の凍結)。

法定後見人が選ばれれば、法的な正式代理人として銀行の窓口で口座の解約や払戻手続きを行い、親御様自身の医療費や介護費用として正しくお金を動かせるようになります。

メリット2:悪質な訪問販売や詐欺から守る「強い取消権」がある

法定後見人(特に「後見」ステージ)には、非常に強力な「取消権(とりけしけん)」が与えられます。

認知症の本人が、家族の知らないところで騙されて購入してしまった高額な布団やリフォーム契約、不当な契約などを、後見人が後から法的に丸ごと取り消して、支払ったお金を取り戻すことができます。

メリット3:医療・介護・福祉の契約手続き(身上保護)を代行できる

お金の管理だけでなく、介護保険の申請やケアプランの契約、老人ホームへの入所契約、病院への入院手続きなど、親御様がこれからの生活を送る上で不可欠なあらゆる契約実務(身上保護:しんじょうほご)を、法的な裏付けを持って滞りなく進めることができます。

申し立て前に必ず知っておくべき「3つのリスク・注意点」

法定後見制度は非常に頼もしい反面、「一度始めたら、途中でやめることが原則できない」という非常に重い特徴があります。申し立てのボタンを押す前に、以下の現実を必ず理解しておかなければなりません。

⚠️ リスク1:家族が後見人に選ばれないケースが非常に多い

「自分が申し立てをするのだから、自分が親の後見人になってお世話をしよう」と考えられている方は特に注意が必要です。

実は現在、最高裁判所の意向もあり、「家族ではなく、見知らぬ弁護士・司法書士・行政書士などの専門家」が裁判所によって後見人に選ばれるケースが全体の約8割以上を占めています。

特に、親の財産額(預貯金や不動産)が多い場合や、親族間で少しでも意見のズレがある場合は、家族がどれだけ希望しても、見知らぬ専門家が選ばれる確率が極めて高くなります。

⚠️ リスク2:財産管理がガチガチになり、家族のための支出は一切不可になる

専門家が後見人に選ばれると、親の財産は家庭裁判所の非常に厳しい監督のもとでガッチリと管理されます。後見人の使命は「本人の財産を守ること」だけです。

そのため、これまで通り「親の口座から孫への入学祝いを出す」「家族で使う車の買い替え費用を出す」「実家をリフォームする」といった支出は、たとえ家族全員が同意していても原則として一切認められなくなります。 一円単位の支出まですべて裁判所への報告義務が生じるため、自由度は完全に無くなります。

⚠️ リスク3:【途中でやめられない】重い維持費が「一生」続く

専門家が後見人に就任した場合、後見人への報酬(基本報酬で月2万〜6万円程度)が、親御様が亡くなるまでの何年間、何十年間も、ずーっと親の財産から引かれ続けることになります。

「実家の売却手続きが終わったから、後見人をやめてほしい」と思っても、手続きの完了を理由に後見人を解任することは法律上絶対にできません。親御様が亡くなるその日まで、重いランニングコストが発生し続けます。

法定後見の申し立てにかかる「初期費用」

手続きを始めるにあたって、最初に必要となる主な費用は以下の通りです。

項目の種類金額の目安備考
裁判所への手数料約8,000円〜1万円収入印紙や連絡用の切手代
必要書類の収集費用数千円程度本人の戸籍謄本、住民票、登記事項証明書など
医師の「鑑定費用」約5万〜10万円裁判所が本人の精神状態を正式に確認するため、主治医などに支払う費用(※必要な場合のみ)
専門家への作成報酬約10万〜20万円複雑な申立書類の作成や調査を行政書士などに依頼する場合の費用

法定後見申し立て完了までの4つのステップ

実際に手続きを進める際の流れは以下の通りです。

1.主治医による「成年後見用診断書」の取得:ステップ1。

まずは本人の判断能力の度合いを証明するため、病院の主治医に「成年後見用の診断書(および付随する判定票)」を書いてもらいます。これがどのステージ(後見・保佐・補助)で申し立てるかの基準になります。

2.膨大な「申立書類」の作成と必要書類の収集:ステップ2。

家庭裁判所に提出するための「申立書」をはじめ、本人のこれまでの人生や親族関係をまとめる「親族関係図」、現在の「財産目録(通帳のコピーや不動産登記簿)」、毎月の「収支予定表」など、数十枚に及ぶ書類を正確に作成し、全国から戸籍などを集めます。

3.家庭裁判所への申し立てと「面接」:ステップ3。

準備した書類をセットにして、本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します。徳島市周辺であれば「徳島家庭裁判所」が窓口になります。申し立て後、裁判所の担当官や参与員による、申立人(あなた)や後見人候補者への丁寧な「事情聴取(面接)」が行われます。

4.「審判」の告知と後見実務のスタート:ステップ4。

裁判所がすべての内容を審査し、最も適任と判断した人を後見人に指名する「審判(しんぱん)」を下します。不服申し立て期間(2週間)が過ぎると正式に確定し、後見人としての法的な口座手続きや生活サポートの実務がいよいよスタートします。

徳島での後見手続き・認知症の生活設計は、当事務所へ

法定後見制度の手続きは、単なる裁判所向けの書類作成ではありません。その本質は、「認知症になった親御様が、これからの人生をどこで、誰と、どんな福祉サービスを受けて、最期まで自分らしく安心して豊かな暮らし(QOL)を送っていけるか」という生活設計そのものです。

一般の弁護士や司法書士は、法律の手続き(書類を右から左へ通すこと)は得意ですが、「介護保険の現場で実際にヘルパーさんやデイサービスがどう動いているか」「認知症の症状の進行に伴って、どんな施設を選べば本人が一番幸せか」という福祉・医療のリアルな現場実態を知りません。

私は行政書士として確実な法務実務を行うと同時に、25年間、福祉・医療の最前線で社会福祉士やケアマネジャーとして多くの認知症当事者・ご家族と伴走し、自身でも約50件の後見人を務めてきた人間です。介護事業所(指定居宅介護支援事業所ソーシャルサポート清水)も併設しているため、事務的に手続きを進める「士業の先生」としてではなく、医療・介護の現場のリアルな運営実態に基づいた、最もご家族が困らない現実的なアドバイスと書類作成ができます。

「裁判所の堅苦しい手続きなんて、何から手をつけたらいいかわからない」

「親の生活を一番に考えた、もめない対策を整えたい」

そう思ったら、どうぞ一人で抱え込まずに一度ご相談ください。「堅苦しい先生」ではなく、「何でも話せる徳島のおばちゃん」として、あなたのご家族の未来の安心のためにトコトン寄り添って一緒に汗をかきます。どうぞ安心してお気軽にお頼りくださいね。

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